ワールド・ロボット・サミット
開幕まであと1年

- WRS応援サポーター杉本雛乃さんが聞く -

 2020年 8月と 10月に福島県と愛知県でそれぞれ開かれる世界中のロボット技術者たちの祭典「ワールド・ロボット・サミット(WRS)」。
 開幕まであと 1年と迫る中、WRSの佐藤知正実行委員長(東京大学名誉教授)に、WRSの応援サポーターの杉本雛乃さんが見どころと意気込みなどを聞きました。

ロボットを「社会に入れる」

杉本 ―

そもそもWRSはどのような目的で始まったのでしょうか。

World Robot Summit 実行委員会 委員長
佐藤先生 ―

 ロボットを社会に入れ、促進することが大目的です。もともとは安倍晋三首相が14年のOECD会議で、「ロボットによる産業革命」を打ち出したのがきっかけです。これを実現するために官邸に会議が設置され、15年2月に「ロボット新戦略」が発表されました。

 その一貫で、4年に1度のオリンピック時に「ロボット・オリンピック」を開こうとの話が出て、その実現に向けた研究会が発足しました。その後、世耕弘成経済産業相の時に名称が「WRS」に決定しました。昨年、プレ大会が東京で開催されました。

杉本 ―

ロボットコンテスト自体はたくさんありますが、そうしたロボコンとの違いは。

World Robot Summit 実行委員会 委員長
佐藤先生 ―

 ロボコンは科学技術の振興を図るものが多数で、イベント実施自体が目的となる場合も多いです。一方WRSはロボットを「社会に入れる」ことが目的で、イベント機会を「利用」している点で大きく違います。WRSは「ロボット競演会」と表現しています。今は科学技術が成熟しており、ロボットを社会に組み入れることで、価値が生まれます。成功確率が一定とすると、トライした数に比例して成功確率は上がります。少数よりたくさんの人が参加した方が当然よい。競技会はその一環です。大事なのは学び方を学ぶこと。競技会は最適な学び方といえましょう。

杉本 ―

WRS競技は4つのカテゴリーに分かれていますね。

World Robot Summit 実行委員会 委員長
佐藤先生 ―

 日本はモノづくりが強いから「ものづくり」分野を設定しました。さらに少子高齢化になる中、サービスは日本にとって欠かせない。それで「サービス」分野。また日本は災害大国ですから「インフラ・災害対応」分野。将来に向けて若い人たちを育てていくことも必要不可欠なわけで、「ジュニア」分野も設定しました。

 WRSは展示会も同時に開く競演会ですが、単に同時開催するだけでは統一メッセージを発信できません。そこで、展示では人間とロボットの将来の姿を提示したいと考えました。例えば30年後に実現するものを示すとなると、20年後、10年後にそれぞれ何を示せばよいか。こうした視点を複眼するロードマップを策定し、それに沿った競技を練りました。


昨年、国際的大会として成功

杉本 ―

昨年プレ大会についてどのような感想をお持ちですか。

World Robot Summit 実行委員会 委員長
佐藤先生 ―

 23の国と地域から126のチームが参加してくれました。当初、国際的大会にすることが目的の一つでしたので、大きな成功といえます。上位は海外勢に席巻されるのではとの懸念もありましたが、日本勢はかなり奮闘してくれました。

 一方で課題も多くあります。競演会にする目標だったわけですが、会場ホールを競技場と展示場に分けざるを得ない物理的事情もあり、目指すレベルでの交流とまではいきませんでした。会場制約の都合が関係したとはいえ、次回本大会では活発な交流が進むよう対応していきたいと思います。

杉本 ―

WRSを通じ、どのような社会を実現できれば理想的と思われますか。

World Robot Summit 実行委員会 委員長
佐藤先生 ―

 モノづくりでいえば単品生産を可能とする「ワンオフ・マニュファクチャリング」です。以前なら例えば自動車生産では、大量生産が前提の一定作業なので、ロボットは非常にやりやすい。今は多様化しているので、多様な要素が必要です。「少品種少量生産」や「多品種変量生産」が求められる。こうした状況下で、モノづくりにおける究極の技術開発目標がワンオフです。それが実現できれば「変種変量」も可能となります。

 そこでWRS競技に、組み立ての要素を入れました。さらに当日に課題を発表する「サプライズ・タスク」を用意。当然、臨機応変に対応する力が求められるわけで、ワンオフに近づけると考えました。ちなみにタスク内容は競技委員長でさえ知りません(笑)。ベルトをかけるタスクですが、これがすごく難しい。

杉本 ―

うまくいったチームはあったのですか。

佐藤先生 ―

ちゃんと合格したチームはありました。たいしたものです。


WRSイズムをレガシーに

杉本 ―

20年大会がもうすぐです。

World Robot Summit 実行委員会 委員長
佐藤先生 ―

 東日本大震災とその後の東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、国は災害対応ロボットのテストフィールドを福島県につくりました。落ちた橋や壊れた建物等があり、格好の試験場になりました。この機会をとらえて福島県で「インフラ・災害対応」カテゴリーを実施。優れたロボットを世界に発信することになりました。
また愛知県は日本で最大のロボットユーザー地域。自動車会社やそれに関連する企業が集積していて、ロボットを使いこなすという意味で、大変先進的です。このような地域で大会を開くのは非常に面白いと思います。

杉本 ―

佐藤委員長は「レガシー」という言葉をよく使われますが、WRSでどのようなレガシーを残したいとお考えですか。

World Robot Summit 実行委員会 委員長
佐藤先生 ―

 コンテストは単に実施するだけでなく、その中に潜む科学技術を進展させることが大事です。重要なことはやり方で、やったことから手法を学ぶことです。それを残せばレガシーになる。例えばオリンピック憲章は、スポーツを通じて人類の向上を目指しています。それとまったく同じことがWRSを通じて手法として確立し、「WRSイズム」というレガシーを残したいですね。